小鳥の涙
――飛び出したいのなら、いつでも飛び出してごらん。
貴方はそう言って、鳥籠の鍵を放ちました。
――ここから飛び出したいと思ったら、いつでもそうするといい。
少し微笑みながら、貴方は鳥籠の扉を少し開けました。
中に居る私が外へ出やすいようにと。
私は鳥籠の中から、扉を押し開けました。
しかし、その手は途中で動きを止めてしまいました。
貴方を見上げながら、私は涙を流しました。
決して嬉しくて流しているわけではありません。
私の胸は辛さのあまり、張り裂けそうなのです。
この鳥籠の外の世界を、見てみたいとは思います。
しかし…貴方はご存知なのでしょう?
貴方とこの鳥籠の中だけが、私の世界を織り成していると。
それを知っていて、貴方は扉を開け放つのですか?
狭く安定した世界をうち捨て、広大で未知なる世界へ飛び立てと言うのですか?
何が起こるか分からない、恐ろしさで溢れた世界へと……
その恐ろしさを思うと、体の震えが止まりません。
次から次へと涙が溢れ出してきます。
涙を流す私を見ながら、何故貴方は微笑んでいるのですか?
私にはどうせ出来ないだろうと、嘲り笑っているのですか?
私の心の内を全て見抜いて、貴方は笑ってるのですか?
貴方は知っているのですか?
私がここから飛び立てないことを。
貴方の側から、離れることが出来ない事を……
私はただ涙を流していました。
この背中にある翼をはためかそうともせずに。
放たれた鳥籠から飛び立つ勇気を持てずに。
ただ、涙を流していました……
-end-