「……さて、と。恵炎、森で何があったか、話してもらうわよ」
村に帰ってきた私たち。
ちなみに、ここは恵炎と土穏の家。
私は恵炎に話をするように促す。
もう一つついでに言うと、さっき森にいた私たち――私と凛泪と土穏と恵炎――に加えて、日華姉さんと迅風もいる。
私が傷だらけになって帰ってきたからね。まぁ、かすり傷だったけど。
それで、日華姉さんの龍力で治してもらったのよ。
恵炎が話を始める。
「えっとですねぇ〜、森で緑心くんに会った時にぃ、後ろから誰かに殴られてぇ、気絶したですぅ。たぶん、地香ちゃんですねぇ」
この子も、なんと言うか、たいした子ね。
自分を気絶させた人に『ちゃん』を付けるなんて。
恵炎は話を続ける。
「それでぇ、しばらくして目を覚ましたらぁ、歌夜ちゃんがいたですぅ。
歌夜ちゃんが龍力で起こしてくれたですぅ。それでぇ、緑心くんが恵炎に謝ったですぅ」
「へ? なんでその緑心っちゅう奴、恵炎に謝ったんや?」
迅風が訊く。
「地香ちゃんを止めれなかったから、だそうですぅ」
「優しい方ですね、緑心さんって」
日華姉さんの言う通りかもしれないわね。
「はい! 緑心くんも歌夜ちゃんもぉ、とっても優しいですぅ」
恵炎は笑顔で言う。
「恵炎、緑心くんと歌夜ちゃんと話してたらぁ、恵炎の夢がかなう気がしたですぅ」
「夢? 何なの? 恵炎の夢って」
私が恵炎に訊く。
「光白龍族と闇黒龍族がいっしょに仲良く暮らすことですぅ」
「ああ、そういえば、よくそんな事を言っていたわね」
「雷音ちゃんはどう思ってるですかぁ?」
「え? 何が?」
「闇黒龍族のことですぅ」
「そうね……」
私は少し考えて、
「向こうに和解する気があるなら、仲良くしてもいいわね。まぁ、少なくても、地香にはその気はないみたいだけど」
光白龍族全体を敵視しているみたいだから。
「そうですかぁ。凛泪ちゃんはぁ?」
今度は凛泪に訊く。
「襲ってくるから返り討ちにしてるだけで、本当は仲良くしたいのよ」
凛泪は笑顔で答える。
「ほんとですかぁ!?」
「ええ」
「日華ちゃんと迅風くんはぁ?」
「もちろん、仲良くしたいですね」
日華姉さんも笑顔で答える。
「オイラは別に何とも思ってへんねんけどな。ま、仲ようしてもええし、攻撃してくるんやったら、応戦するだけやしな。あ、でも……」
「でもぉ?」
恵炎が語尾を繰り返す。
「どんな料理食べてんのか、気になるわ」
迅風らしいわね。料理好きだしね。
「あぁ、確かに気になるですぅ。今度緑心くんに聞いてみるですぅ」
「おっ、頼むな、恵炎ちゃん」
「あっ、お兄ちゃんは……どうですかぁ?」 少しためらいながら恵炎は訊く。
「俺は多分……地香とあまり変わらない」
……そうよね。土穏は実際に、目の前で両親が殺されるのを見ていたのよね。
「そう…ですかぁ……」
恵炎はうつむく。
「でも……」
「?」
恵炎が顔を上げる。
「今日、あの歌夜の言ってる事を聞いて、少しは……闇黒龍族を受け入れられるような気がするんだ」
「ほ、ほんとですかぁ!?」
恵炎は土穏に近づく。
「ああ……」
土穏はそう言いながら、恵炎の頭を撫でる。
「お前の夢が叶うように努力してみるよ」
土穏は優しく微笑む。
「はい!!」
恵炎はそれに精一杯の笑顔で応える。
……そうよね。少しずつでも歩み寄る事が出来るなら、それで良いのかもしれないわね。
少しずつ相手のことを理解していく……悪くないわね。
あ、そういえば、闇黒龍族に私より強い奴っているのかしら?
いるなら、手合わせをしてみたいものね。
いつも土穏とやっているような、お互いを競い磨き合うような手合わせを、闇黒龍族ともしたいわね。
きっと、私の考えている事は現実になるわね。
『どうして?』って聞かれても説明はできないけど。
でも、近い未来にきっと現実になる。
その日が来るのが楽しみね。


第一話−光と闇の邂逅− 完



 

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