「ったく、一体どこまで行くつもりなのよ……」
私たちは地香を追いかけて、森の中を走っている。
必死になって追いかけているのに、私たちと彼女の距離は一向に縮まらない。
しばらくこの状態が続いた、その時……
「雷音、前」
「ええ、人がいるわね、凛泪」
かなり先のほうにだけれど、人がいる。
「1人……2人、二人とも男ね。手に何か武器を持っている。後ろ髪が黒い……闇黒龍族ね」
おそらく地香の仲間ってところでしょうね。
私が思っていた通り、地香は男たちの前で立ち止まる。
そして、二言三言言葉を交わしたあと、こちらを振り向く。
私たち――私と凛泪と土穏は、ある程度地香たちとの距離をとって立ち止まる。
「恵炎はどこだ?」
土穏が地香を睨みつけながら口を開く。
「この奥で眠っているはずだ。緑心に付き添われて」
地香が答える。
「……で? 何で私たちをここまで連れてきたの、地香?
あなた、光白龍族に復讐するために私たちの村まで来たんでしょ?」
今度は私が地香に訊く。
「それは、いくら地香が強いといっても、一人で成し遂げられる事ではありませんからね」
地香の代わりに横にいた眼鏡をかけた長髪の男が答えた。
前髪と瞳の色が水色から途中で青に変わっている。龍氷力の使い手ね。
「そういう事だ。だからお前たちだけをここまで連れてきた。
さすがに、私一人だけで光白龍族全員を相手には出来ない……」
地香は少し不満げに口を開く。
彼女、独りで復讐を成し遂げるつもりだったのね。
敵ながら、無謀な事を考えるわね……。
「そういう事なら、しかたないですね。私たちとて、ただやられるわけにはいきませんから」
凛泪はムチを構え、戦闘態勢に入る。
「そうね。ちょうど3対3。ちょうど数が合うしね……」
「…………」
私と土穏も武器を構える。
地香たちもそれぞれ武器を構える。
お互い目の前にいる相手を睨みつけ、そして、戦いが始まった。



  

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