次の日。日が沈んであまり時間が経たないうちに、村の皆が広場に集まる。
広場の奥には光白龍を祀った神殿、『光白龍の神殿』がある。
広場の真ん中で火が焚かれ始める。
これが祭りの始まる合図になっている。
まず、姉さんが一人で音楽にあわせて踊る。
手には姉さんの身長ほどある杖を持っている。
杖は代々龍巫女の間で受け継がれている物で、儀式の時なんかにも使われるのよ。
杖には長めのひもが4本ついているのよ。
姉さんは手を前に突き出してその場でくるっと回ったり、杖だけを軽く回したりする。
姉さんの動きにあわせてひもと、それから姉さんの長い銀髪がなびく。
さらに、髪は火に照らされてきらきらと光っている。
「うわぁ! 日華(リーファ)ちゃん、キレイですぅ!」
隣に座っている恵炎が声を上げる。
確かに恵炎の言う通り、踊りだけでも綺麗なのに、ひもと髪の動きも合わさってすごく綺麗。
ちなみに、私たちは料理を食べながら姉さんの踊りを見ているのよ。
あら? この料理、迅風が作ったのね。よく食べるから味でわかるわ。
姉さんが踊り終わった後、次は祭巫女が踊る番。
私と凛泪を含めた七人の祭巫女は、火を囲むように輪を作り、音楽にあわせて踊る。
手に長いひもが2本ついた直径30cmのリングを両手に一つずつ持っているの。
私たちは常に右回りに動きながら踊る。
両手を横に伸ばしてくるりと回り、一瞬止まって右手のリングを頭上に投げて、
リングが落ちてくるまでにその場で右回りに一回転して、リングを手に取る。
こんな動きを繰り返しながら、しばらく踊り続ける。
私たちがしばらく踊り続けた後、今度は姉さんと私たち祭巫女が一緒に踊る。
姉さんは私たちの作る輪の中心、火の近くで左回りで踊る。
私たちはさっきと同じように輪を作って右回りに踊る。
踊りながら時々視界に姉さんが入る。
火の近くで踊っているせいかしら。姉さん、本当に綺麗ね。
私たちと姉さんが踊り終わった後、最後は姉さんが光白龍様を讃える歌を歌う。

  この地に生きる我らの喜び
  奇跡と祝福 平和と自由
  全てが光の恩恵
  我らの願い 我らの祈り
  光の下に届けられ
  全ての感謝は光の下に届けられる

この時だけは皆食べるのもやめて、姉さんの歌を聴く。
よく通る本当に綺麗な声。妹の私でも思わず聞き惚れてしまう。
姉さんが歌い終わって、この祭りもお開き。
この後はいわば自由時間。
家に帰るもよし。ここでしばらくお喋りするのもよし。残っている料理を食べるもよし。
ちなみに、火はまだ消えていないけど、消えるまでずっと焚き続けるのよ。
「あれぇ? 雷音ちゃん、どこ行くですかぁ? お料理食べないですかぁ?」
どこかに行こうとした私に恵炎が訊く。
「少し火照っちゃったから、ちょっと涼みにね」
踊ったのと火を焚いているせいかしらね。
そういうわけで、私は他の場所に移動する。



  

presented by Mito Natsuhatsuki since 2003.5.18